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予兆

妖怪アミキリがこの世界に疫病をもたらしたとき、私たちは、初めて彼が私たちの生活の前に立ちはだかっていることを知った。それまで、私たちは、彼が伝えてきた色々なサインに気がつくことができなかったのだ。

ことのきっかけは、イタリアから遠く離れた日本で、すでに数年前から起こっていた。その頃の日本では、自分の部屋に引きこもり、コンピューターやゲームの光だけを浴びながら生活する若者が増えていた。

この若者たちは「ひきこもり」と呼ばれていて、言葉そのまま「隔離された人」という意味である。やがて、彼らは、愛と人生のすばらしさを日に日に忘れていくような、創造性の欠けた世界を代表する存在となっていった。彼らが住む世界では、自分の周りの人々、そして、私たちの暮らす母なる大地をいたわることがどんどん忘られていき、人々はますます孤独を選ぶ一方だった。

母なる大地である地球は、私たちにはっきりとその苦しみを伝えてきた。急激に溶けていく氷河の上で、シロクマが数少ない獲物を捕らえようと、最後の力を振り絞って歩き回っている間、ほかの地域では、大きな山火事が数週間にわたって広がり続け、感動的な自然の美しさは無残にも破壊されてしまった。

遠く離れた場所から見てみると、今の地球はまるで一面が厚い泡に覆われているようで、その泡は地球で暮らす者たちの命を脅かしている。人間や動物たちは、かつてのように、地球が育んできた美しく豊かな自然を享受することができなくなった。

そして、妖怪アミキリが疫病とともに現れたとき、世界中のすべての人々が「ひきこもり」となって、世界から隔てられた存在となってしまった。

ちょうどその時、ここナポリのモンテサント地区で、私たちは、ある日本の古い伝説を思い浮かべていた。それは、ナポリに伝わるパルテーノペの遠い親戚にあたるある妖怪にまつわる言い伝えで、この疫病がもたらした危機を乗り越えるために、私たちは彼女に助けを求めることに決めた。その妖怪こそ、「アマビエ」だ!

La profezia - Capitolo I (IT)
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