top of page

到着

ナポリに到着すると、アマビエは海の底や空の色々なところを見回しながら、甲斐もなくパルテーノペを探し続けていた。そのうち、長旅の疲れがたまっていたアマビエは、ちゃんと飛べずに鐘塔にぶつかって、近くに住んでいる人のテラスへと転がり落ちてしまった。

転んだところから起き上がったアマビエの後ろから、甲高い声が聞こえた。

「おい!そこの妖怪!」

声のする方を振り向くと、そこにはハゲ頭の上に赤いカロッタ帽を被った、修道士姿の小人が立っていた。

「私はアマビエ、日本からやってきた妖怪です。」アマビエは、あらたまって、そして少し誇らしげに挨拶した。

すると、彼は韻を踏んだように、歌を歌いながら自己紹介した。

「俺の名前はモナチェッロ、妖精の中で一番早く動けるんだ。綺麗な家にも汚れた家にも住み着いては、夜中に悪さする。だから俺に好かれないとちょいと面倒なことになる。でも、もしお前がいい奴で俺に気に入られたら、嬉しいことが起きるぜ!」

そう言いながら、この小さな妖精は、その古びた服にシワを寄せながら、深くお辞儀した。

「やっぱりあなたは妖精なのね!それなら、パルテーノペがどこへ行ったのかを教えてもらえない?」

「パルテーノペ?」少し迷ったような声をして、妖精は呟いた。そして、彼はナポリの方言で説明し始めた。彼は、興奮すると、ナポリの言葉で話す癖があるのだった。

「そいで、ここ住んじょっと人ったちの暮らしについて、おい(俺)は全部知っちょっと。今、みんな町に出られんから、かわいそうじゃんな。ちょうど、ネズミんごったが(のようだ)。そげんこっがあって(そういうことがあって)、おいたちモナチェッロも仕事が無かごんなって困っちょっど。

もういたずらも悪かこともする気がなかが。人どんは、ものを失しても、盗られてもいっちょん(全然)気がつかんで心配しとうが。そいで、リモートワークとかオンライン授業いうては、妙なことばっかりしとう。もう、どげんでんこげんでんよかが!(めちゃくちゃだ!)ぜん(金)に困っまっちょう人がおうが(いて)、おいがそん人たちの家に入っが(入って)、ぜんとか置いてあっが(置いていくが)、そいが(それでは)うっぜえ(すごく)少なかと。おいたちが、その恐ろしか病気をどげんかして止めんないかん。」

「その通り!!まさにそのために私はここに来たの!でも、まずはこの土地の守護精霊パルテーノペと話さないといけないの。どうしても彼女を探さなきゃ!」アマビエは、モナチェッロの話を聞いて、そう言った。

「...いつもどこにでもいるけど、同時にどこにもいないとも言われてる。俺たち妖精の中じゃ一番強いけど、やる事があって、いつもどこかに行っちまうんだ。見つかりにくい妖精だ!あそこの山が見えるか?あれはヴェスヴィオっていう山で、火の妖精なんだ。今は眠っているけどな。あいつが起きないように、パルテーノペは子守唄を歌って眠らせてるんだ。そんなことができるのは、彼女だけだ。まっことすごかおごじょ(女)じゃ。」と夢中な声でモナチェッロが呟いた。

「でも、彼女は一体どんな姿なの?私のような人魚みたい?」もう我慢できないというように、アマビエは大きな声で尋ねた。

「人魚?うーん、鳥や魚の姿をしちょっこと(していること)もあれば、まっこて(とても)綺麗な格好してるおなごの姿をしちょっこともある。ちょこちょこ(ときどき)、全部まぜておるときもある。」

 

「それって、自由に七変化する日本の化け物みたいじゃない!!」アマビエは、思わず叫んだ。

「ばけ...なんじゃって?そいで(とにかく)おいが知っちょとは、パルテーノペはこん土地のどこでんいるがね。ここの町ん人は、そのおなごん子(彼女)によっては(にとっては)、こどん(子供)のことじゃんね。そのおなごん子は、ここん町ん人たちのためによかことをしちょっとな(しているんだ)。」

それを聞くと、アマビエはがっかりした様子で首をうなだれた。しかし、その時、突然暖かく眩しい光に体が包まれているのを感じた。振り向くと、そこには、光に包まれた大変美しい女性の姿が見えた。

「パルテーノペ!!」アマビエは嬉しそうに声をあげた。

「やあ、愛しいベッランブリアーナ!!」モナチェッロも喜んでそう叫んだ。

 

*本翻訳では、ナポリの方言を「鹿児島弁(薩摩方言)」を用いて訳しています。これは、ナポリと鹿児島における景観や地理的特徴が類似しているために、両都市が姉妹都市としての協定を結んでおり、文化的交流も盛んであることに由来します。

皆さんから寄せられた文学作品

皆さんから寄せられたイラスト

Amabie cerca partenope - laura e claudia

Lo sguardo di Amabie - collage di Sergio

Amabie - assembramento - Antonio Giodano

L'atterraggio - Capitolo III
00:00 / 00:00
bottom of page